• 「猫の手貸します」

「高校生、受験より就職が不安=一番人気は『公務員』」
新聞の見出しに目が止まった。
電通総研による高校生への意識調査の結果である。
高校生の不安は、
将来の就職について向けられており、
目の前の「大学受験」をも上回ったという。
高校生が公務員志望…。
公への志によって選択されている、
というわけではないようで、
安定志向の現れのようだ。
ところで。
先日インターンの大学生を受け入れた際。
別の教授から、計2名の学生を預かった。
それぞれ示し合わせたかのように
「公務員志望です」
「そうですか…」
その時私は、相槌を打っただけだった。
しばらくして、私に同行して、
埼玉県の経営者たちの勉強会に学生らが参加した。
彼らにとっては、
ナマの会社に接したのは、
そこが初めてだったのだろう。
「民間も受けてみたいと思います」
との言葉に変わり、
いまや「まずは民間に行って、
 その後に公務員を目指せたらと思います」
と変化を遂げてきたことから、
彼らの衝撃は伝わってきた。
狭い世界の話だが、
この一つの事例をもってして、
彼らには、体験や経験、
自らの曇りのない眼で民間の会社を見たり、
会社で汗を流す生身の人間と接する経験、機会が、
決定的に欠落している、
と強く確信している。
先日の高校生議会では、
農業実習の実施を求める高校生は多かったし、
福祉現場での実習を経験して、
そのままそこを就労の場とした
若者の話も多数聞いている。
冒頭の調査結果は、
その経験の無さ、体験する機会の少なさが
表面化している数字ととらえたい。
若さの特権は挑戦することにあると思うが、
その選択肢を得る機会を持てないまま、
高校生、大学生になる若者が多いのかもしれない。
この責任の所在は、
若者への苦言を呈するというよりは、
私たち大人の側が、
そうした機会を若者たちに作ってきていないことに、
向けられるべきだろう。