• 「猫の手貸します」

「生活保護の申請件数が急増している」というニュース。
そして「ニートが増えている」というニュース。
一見、別の分野で検討されている課題だが、
実は同根であるといっても過言ではない。
その根には「雇用の機会がない」という現象がある。
「仕事さえあれば、生活保護の申請をしなくて済むのに」
私が聞いた年配女性の言葉である。
仕事で稼げれば自立できる人は、
どれだけいるだろう。
雇用の機会があれば、
生活保護受給者数も確実に減り、
税で投じられている生活保護費も減少する。
就職氷河期、といわれた約10年前。
ニートと呼ばれる、就職をしない若者の生態が、
社会問題として取り上げられた。
若者への感情的な物言いが多かったが、
この現象も元をたどれば、
雇用の場が減少したことに起因している。
いったん家にこもってしまえば、
再び社会に出ることは、
メンタルの面で難しい。
これを単に「甘え」とし、
感情論で片づけてしまっても、
解決には結びつかないのだ。
今、その時よりも深刻だといわれる中、
「中卒『ニート』761人」とのニュースもあった(埼玉新聞・7月20日)。
埼玉県の教育局の調査だそうだ。
心配は募る。
90年代後半の森首相までの公共事業による国の借金の急増。
これもまた、雇用を確保する意味合いが
強いものだといえるだろう。
この方法がいいとは思えないが、
現実として、特に地方に行けばいくほど、
雇用の場が無く、
公の分野で税により資金を調達して、
仕事を作る方法がとられてきたものだ。
逆の面からの事例では、
ニューヨークの犯罪の数についての話が象徴的だ。
ジュリアー二市長の時代に、
犯罪数が激減した。
このとき「割れ窓理論」が注目された。
大きな犯罪の前に窓を割る行為などの小さな犯罪がある。
この小さな犯罪を見過ごさない、
という取り組みだ。
この取り組みも決して過小評価するわけではないが、
実質的に犯罪を減らすことに貢献したのは、
ニューヨークの好景気による雇用機会の増大だった。
こうして数々の減少を見てくると。
様々な分野で課題とされていることの解決に向けて、
「雇用」というキーワードが浮かび上がってくる。
企業も好き好んで雇用の機会を
減らしているわけではないだろう。
自らの会社の存続のために、
人件費を削減しているのだ。
日本の社会全体の景気の動向により、
儲けがなかなか上がらないからである。
景気の問題が改善すれば、
雇用の問題が解決に向かい、
各種の課題も改善されてくる。
言葉で言うほど簡単ではないのだろうが、
この方法が最も説得力のある方法だ。
税収不足の問題も、
やはり景気の動向と密接な関係がある。
ここで経済成長戦略の話となる。
いま日本が置かれた環境は、
決して簡単ではない。
右肩上がり経済を支えてきたモデル、
つまり日本を世界的な経済大国に押し上げたモデルは、
日本社会の成熟とともに
社会主義圏の国々が自由経済に参入した事により、
弱点となっていった。
中国は安い人件費で商品を作るから、
その商品に対抗するために日本企業の商品も安くする。
「輸入デフレ」と呼ばれる現象だ。
内需の拡大という、古くて新しいテーマに、
現政権が挑戦し、新たな時代の道筋を
つけることができるのか注目したい。
何より、ここで言いたいのは、
数々の問題の解決に向けて、
経済成長が薬となる、ということである。