• 「猫の手貸します」

本日、昼。
テレビで河村名古屋市長と市議会の
攻防を伝えるテレビを見ていると。
唐突に玄関の呼び鈴が鳴る。
ンモーこれから、という時に。
残念な思いを抱えたまま、玄関に出ると、
ある作業着を着た会社員。
営業であった。
婉曲に家の外装塗装の打診を受けたが、
すぐさまの回答は断る。
が、朴訥だが、素性は明確だったし、
人の好い方だったので様々な話を続けた。
50代の責任者。
宮大工の経験もある、
建設作業員とのこと。
若い人がなかなか続かないこと、
単に築年数だけでは住宅の耐久度は計れないこと、
一軒家でも競売にかけられるところが増えていること…
こうした話の中、例の一件の話が出た。
会社員が切り出す。
「でもね、消費税が上がっちゃうとねえ…」
以前、導入された時、
そして3%から5%に上がった時、
それぞれ直前の駆け込み需要は大変なものだったという。
駆け込み需要で、儲かったという単純な話ではない。
それだけ大きな影響がある、ということ。
もちろん、需要の前倒しなのであって、
増税後も需要が継続するわけではない。
今回も、我が家と同様に営業に回っていると、
消費税の増税前に仕事をお願いしたい、
そんな話を受けるという。
5%から10%。
ここで倍に上がったら、
もう、仕事は成り立たなくなってしまう…
早くも増税後を心配し、
その会社員は、弱り切った様子であった。
今回の参議院選挙直前の、
この件のメッセージ。
参議院選挙の前の協議を前提にした、
一言だったのかもしれない。
しかし、草の根の生活には、
こうした少なからぬ大きな影響を与えているのだ。
増税は嫌なことだが、
でも、社会を維持していくために、
仕方ない部分も承知している、
必要なところには応分の負担はする。
これが国民の多くの人の意見だと思う。
「(増税したら) 介護のような大変な仕事には、
 もっとお金が回るようにしてほしいですよね」
この会社員も言っていた。
皆、心の奥では、そう思っている。
でも。
国民の多くは、こちらもそう思うだろう。
増税の前にすべきことはある。
増税をお願いする前に
打ち出すべきことはあるのではないのか。
国会議員、官僚の自ら身を削る話、
財政立て直しの話、
経済成長戦略の話、
社会保障の全体像の話…
その一言を言う前に、
もしくは同時に用意しなければならないことは、
たくさんあったはずだ。
やはりこの話は、
もっともっと慎重に取り扱うべき話だった。
一説によれば、選挙戦術として、
この消費税論議を利用したとも言われている。
他党の政策を取り込むことで、
選挙戦のマイナスを防ぐ。
もしくは。
鳩山首相時代の懸案だった
普天間基地問題や政治とカネ問題を争点にしないために、
消費税増税策を唐突に打ち出し話題をそらす。
これらは裏付けの無い話だ。
が、もし本当だとしたら、
どれだけ罪深いことか。
炎天下の中、夕立の中。
草の根で汗を流して
必死に生き残りをかけて仕事をしている人たちに、
とても顔向けできないだろう。
いても立っても、いられなくて、
その会社員の帰りがけに、
冷えたトマトジュースを手渡した。