衝撃のニュースが飛び込んできた。
さいたま市の大きな懸案だった
さいたま新都心「8‐1A」街区の開発。
これを担うはずだった構成企業グループのトップ、
三菱地所から、
事業採算性の目途が全く立たないため、
「本事業から撤退したい」
との申し入れがあったそうだ。
新都心「8‐1A」街区。
新都心駅を降り、
西側のスーパーアリーナ方面に歩く。
その南に目を向けると、
広大なアスファルト敷きの空き地が存在する。
しばらく駐車場として活用されていたが、
いよいよ開発が進められるはずだった。
開発を担う三菱地所の撤退の意思を受け、
再び白紙から協議を進めることとなる。
振り返ると。
そもそも新都心とは、
東京一極集中を分散化するための目玉として、
国策で進められてきた開発だった。
さいたま新都心は、東京特別区以外で、首都を補完し地域の中心となるべき都市「業務核都市」に、旧大宮・浦和地区が指定されたことにより、両市の間にまたがり、1984年(昭和59年)に機能を停止した国鉄大宮操車場の有効活用として、政府閣議決定により再開発・土地区画整理事業が行われたものである。2000年(平成12年)5月5日に「街開き」が行われた。街開き後は埼玉県内でも有数のビジネス拠点となり、さいたま市の都市計画でも浦和駅、大宮駅と並ぶ主要ビジネスエリアとして指定され市により企業誘致が進められている。(ウィキペディアより)
しかし。
計画のころとは経済環境が一変。
バブル崩壊、右肩上がり経済の終焉。
新都心はその外観を整えることと引き換えに、
置かれた環境が様変わりし、
時代に取り残されることとなった。
駅の整備、合同庁舎、高速道路、都市計画道路…
インフラ整備が進んだし、民間の高層ビルも連なるが、
肝心のテナントが入らない。
民間企業が来ない…
新都心への国の関与は引き、
民間企業は事務所を都内の
中心部に持つ傾向が強くなった。
そのため、一等地であるにもかかわらず、
テナントは空きが常にある状況が続いている。
3市で合併までして受け止めた新都心。
その後の、閑散とした空気は、言うまでもない。
もちろんアリーナのイベントや、
お祭り、各種会合などで訪問する人はいる。
しかし、それが根付かない。
他所からの訪問者を案内すると、
「人工的なまち」との言葉が出てくるほど、
人間臭のしない印象のエリアとなっている。
新都心駅の反対側、東側のショッピングモールは、
にぎわいを見せているようだが。
結局、クダンの「8‐1A」街区は
着手されずに駐車場として置かれ、
開発について長く検討されてきた。
流れが変わったのは、
「さいたまタワー」構想。
私は汲みしなかったが、
これを機に開発の機運が盛り上がってくる。
タワー誘致の結果は言うまでもなく、
墨田のスカイツリーに引導を渡すこととなったが、
県政界を中心とし、
新都心の開発構想が一気に浮上し、
三菱地所をトップとする構成企業グループの提案した案、
民間企業の事務所を主とする
高層ビルが建てられる計画が進んでいた。
その後、リーマンショックや慢性的な景気悪化の流れから、
事業採算性のめどが立たないと判断されたのだろう。
では当面このままにしていていいのか、
といえば、事態はそんなに時間的猶予があるわけではない。
今、この広大な一等地を所有しているのは、
●UR(都市機構)
●埼玉県
●さいたま市
の3者である。
そのうち、URが圧倒的な面積を所有している。
このUR。
国の独立行政法人である。
昨今の民間化の流れで、
保有する土地を一刻も早く売りたい、
という政府の意向を受けている事情がある。
もし。
計画頓挫を受けて、
3者がそれぞれ保有する土地を、
バラバラに売りに出せば。
細切れのマンション群ができてしまうに違いない。
さいたま市の大規模開発は、
圧倒的に高層マンションを念頭に置いたものが多い、
それは開発資金をマンションを売る形で
調達するくらいしか方法が見いだせないからである。
これが都内の中心部であれば、
民間デベロッパー主導の開発を、
企業の事務所家賃からの資金調達を見込んで進めることができる。
財政面での公的機関の関与は少なくて済むのだ。
六本木ヒルズなどはその典型例である。
財政事情が厳しい折、
民間も乗り出してこないとすれば、
この土地の活用方法は限られ、
結局マンション群に…
と恐れる事態となってしまう危惧がある。
さて。
私もさいたま市の市政に大きな責任を負う立場だ。
今回のこの新都心の一等地の開発計画が、
ストップした事は大きな出来事だと認識している。
これまでの計画を心から賛美していたわけではないが、
代替案が見いだせず、
またさいたま市の保有する土地がそもそも少ないことから
あまり発言力を有しているわけではない、
そんな思いもあり、消極的賛成の立場だった。
ほとんどUR、そして埼玉県の保有する土地であり、
この開発は両者が主導してきた。
では今後、どうするか。
全く財政を考えないで自由に考えるなら。
さいたま市が市の税金で、
URや埼玉県から土地を買い取り、
さいたま市のコントロールの下、
この開発は時間をかけて進めたらどうだろう。
新都心はさいたま市の位置的中心。
これまでのインフラ開発もしっかりしていることから、
将来のさいたま市の有力な中心地となり、顔となる。
その顔を自らの力学で
コントロールできる事は望ましいことだ。
ただ。
もちろん、財政的な面を考えれば困難だとわかる。
驚くほど莫大なお金が、
土地を取得するだけでもかかるだろう。
これを税や将来の負担の借金で賄うというのは、
いささか無謀な話となる。
この件は、一人ではなかなか答えの見出しにくい話であり、
議員や行政職員、市民、有識者との間で、
様々な角度から議論を積み重ねていきたい。
少なくとも、新都心前を、権利の錯綜した
細切れの高層マンション密集地にすることだけは避けたい。、
将来にわたってまちづくりの
悪い手本を残すこととなるためだ。
これこそ超党派、思想信条を超えて議論すべき、
さいたま市の大きなテーマだ。