• 「猫の手貸します」

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写真は宮ノ丘幼稚園。昨年の2008年に完成した。ランドスケープの専門家にプラン作成を依頼し、作られた特徴ある幼稚園である。

当幼稚園は、1985年から24年間の時間を刻んできた。この新しい施設は宿泊できるスペースが設けられているため、社会人となった卒園生が、わざわざ訪ねてくるという。

下から見上げると、大人でも登るのが大変な斜面。角度も高さも、ちょっとした山登りの感覚となる。園の教室前には馬がいる。子どもたちは乗馬も経験する。下ると川がある。焼き芋を焼く準備が整っていた。ここは驚くことに幼稚園の先生たちが自らの手で石を並べて作ったという。イチゴやジャガイモ畑。半年続く雪の季節に対応するための巨大で空間の広いビニールハウス。ここには芝が敷き詰められ、冬でも子どもたちは駆け回って遊んでいるという。

施設の隅には、自前のショベルカー。2台あり、一代は相当古い。説明してくださった先生によると、初代理事長が自らこの地を開墾する際に使用していたという。子どもを思う大人たちにより、子どもの五感が育つために、尽力を注いできた姿が垣間見えた。

なかなかパンフレットなどの資料だけでは実感できないだろう。今、自然にまみれて五感をはぐくむという大切な視点が欠けている幼児教育に、一石を投じる幼稚園となるだろう。

最後に以前PTA会長から聞いた話を記したい。さいたま市の某所都心部に住む、小学生の子どもを持つ母親の声だ。

「今、私たちの地域の子どもたちは、遊び場所がないんです。公園(児童遊園)では、ボール遊びはできないし、親たちは携帯の防犯情報で不安な気持ちであるため、公園で遊ばせたがりません。家で友達とゲームをしていてくれれば安心なんです。そのうち小学校の高学年になるとお稽古ごとや塾に気出します。思いっきり外で遊ぶ機会がないんです。そのまま大人になってしまうと思うと、いたたまれません」

宮ノ丘幼稚園とは、さいたま市はずいぶん環境が異なる。だからすぐさまこの幼稚園的なものを作ることは困難だ。しかし、今一度、立ち止まって、子どもにとって何が必要なのか、欠かすことができないのかを再考すべきである。この幼稚園はそんなことを私たちに語りかけていた。