• 「猫の手貸します」

この世の中で、何より理不尽なこと。

それは子どもが大人から虐待を受けることである。

虐待には4種類あって、
死にいたる悲劇的なケースの身体への虐待に加えて、
性的虐待、精神的虐待、育児放棄という虐待もある。

今回は身体への暴力による虐待について。

10月10日。
さいたま市内。

1歳数ヶ月の女児が突き飛ばされ、
頭にけがを負った。

記事には
「事件前日には病院から児童相談所に虐待の疑いありで通報があった」
そんな趣旨のことが記されている。

「なぜ児童相談所はもっと早い段階で動けなかったのか」
「児相が早く行動して保護していれば、
 子どもはこれほどの被害を受けなかったのに」 

そんな声が聞こえてきそうだ。

現に、ある記事の見出しには
「通報なぜ生かされず」
とあった。

しかし。

冷静に考えたい。

大前衛として、
虐待に対応する体制に目を向けたい。

児童相談所の、
中でも直接こうした案件を担当する「児童福祉司」の
置かれた現状。

対応するための体制が整っているのか。

最も説得力のある数字。
それは、一人の児童福祉司が担当する案件の数。

約127件――

この数字が児童福祉司の置かれた過酷さを物語っている。

一人の児童福祉司が、
平均で127件を、
同時に抱えているのだ。

「同時に」である。

何らかの形で児童相談所に、
児童虐待の疑いに関する通報が入れば。

通報を受けた相談所、
つまり児童福祉司たちは、
48時間以内に対応しなければならない。

110番通報で警察が、
119番通報で消防隊員や救急隊員が、
それぞれ出動するのと同様である。

相談所に寄せられる
「通報」や「相談」の件数が増えている。
物理的な量が絶てい的に増えている。

しかし、それだけではない。

年を追うごとに複雑多様化する内容。
親の貧困やDVなど複合的な要因により、
虐待が生じるケースがある。

明らかに親が親の資格を
失っているケースも見受けられる。

児童虐待防止の法令が整備され、
児童虐待に関する注目度が高まったことによる
社会全体の価値観の変化も、
その案件の比重を重くしている。

どう考えても、
児童福祉司の質を問う前に「量」が必要だ。

一人が物理的処理能力を大幅に超え、
疲弊しきってしまえば、
燃え尽き症候群となり、
その立場を離職していく可能性もある。

そうなると知識と経験を積んできた専門家を失うとともに、
また一から人材育成を進めていかなければならないこととなる。

児童福祉司という人材は地域の財産として、
早急に待遇などの見直しが必要だと考える。

こうした背景をもって、
子どもにとっての、
そして社会全体にとっての、
児童虐待という理不尽につながっている、
もしくはその対応に十分対応できていないとしたら…

政治・行政として落ち度があった、
と言われてもしかたがない。

さいたま市で起きたことについては、
その市議会議員である私自身の責任でもある。

先日の決算委員会において、
私たちの会派では、
児童福祉司の、こうした現状を改善するために、
量的な面での改善を提案したが、
今後もこうした活動を継続していく。

今回の虐待のニュースを知り、
その被害を受けた女児に思いを馳せている。

改めて身が引き締まる思いがした。