• 「猫の手貸します」

今回の発端の言葉

私が議事進行をかけるきっかけとなった
吉田議員の発言中の言葉についても
触れておかねばならないでしょう。

吉田議員は、
12月15日の予算委員会における討論の中で、
次の言葉を使いました。

通常、私は使用しない言葉ですが、
ここではあえて挙げさせていただきます。

「片手落ち」

吉田議員が討論の発言を終えた際、
この言葉について、
私が次のように議事進行をかけました。

ただいまの吉田委員の討論の中に不適切と思われる言葉があり ましたので、委員長により精査し、後日、理事会で諮っていた だきたいと思います。よろしくお願いします。

公式の場での発言は会議録に残ります。
ある種、永遠に残る。

そして議会は発言の削除をする権限がある。

判例があるなどの明確な差別語については、
議会や委員会の判断で
削除することとなっているのです。

もし明確な差別語が掲載されていたとして、
それはすでに発言者の責任の域を超えているのです。
それを掲載した議会に責任が及びます。
議会には発言の削除をする権限があるからです。

では今回その言葉の発生した
予算委員会の委員の一人として、
どうするか。

何も言わないという選択肢もあったでしょう。
しかし、この言葉を見過ごさず、
慎重に取り扱ったほうがいいのでは、
と率直に感じました。

今回はその責任感から
議事進行に至ったことを
ご理解いただきたく思います。

さて、この言葉をめぐっては、
差別語ではないとする意見と、
差別語に類するという意見が混在しています。

十年以上前ですが、
ある場所において
雑談でこの言葉を使用した際に、
市民団体関係者から、
「土井君、それは差別語だよ。
 使うのはやめたほうがいいよ」
とのアドバイスを受けたことがあります。

また、テレビを見ていた時、
田原総一郎さんがこの言葉を使用し、
不適切な言葉だったとして、
言い換えていたのを見た記憶がありました。
(たぶん「朝まで生テレビ」だと思うのですが…)

そんな経験から、
吉田議員の討論の発言の際に
違和感を持ったものです。

ちにみに今回の私の議事進行について、
弁明において吉田議員が
「言論封殺」につながりかねない旨の
発言をしているのですが、
いかがでしょうか。

この言葉を理事会で慎重に審議することが、
吉田議員の言論封殺だとは思えないのですが。

むしろ吉田議員の言葉を
尊重するからこその判断とすら思うのですが。

そして言葉を慎重に扱う姿勢を持つ議会こそ、
質の高い議会、
と言えるのではないかと思っています。

では実際にこの言葉は
どのようなものなのでしょうか。
私が調べた範囲での結果を記します。

この言葉の語源は、
「片」+「手落ち」
です。

「片手」+「落ち」
ではありません。

ですから語源としては、
差別用語ではない
のです。

まずこれが一つの事実。

これを受け、ネットでは
「過剰反応は良くない」「言葉狩りである」
とする見解が数多く見受けられました。

一方で。

メディア業界では
放送禁止用語
または使用しない言葉の一つに
位置づけているのも事実です。

少なくとも、
NHK・TBSラジオ・テレビ朝日・朝日新聞
は明確に訂正したり
言い替えたりしている事実があります。

また、昭和26年においては、
簡易裁判所ではありますが、
この言葉が身体的な差別に使用されたとして
差別語として有罪の判決が下されたようです。

この3日間、
調べれば調べるほど、
両極端の見解です。

そんな中、この言葉の扱いについて、
興味深かったのは、
本などの校閲を職業とする方の話。

私の見解は、
これを参考にすることとしました。

それを総合すると、
●あまり神経質になる必要はない。
●もしこの言葉が出てきた場合、
 付箋紙をはり、著者に確認をする。

というものでした。

つまり言葉の発信者に判断をゆだねるのが、
この言葉の扱いである、とのこと。

こうして様々な媒体や人を介して調査した結果、
私は次のような結論に至りました。

●自分自身は今後も使用に気をつける言葉である。
●ただ、語源は差別用語ではなく、
 差別的文脈で使用されていなければ、
 神経質になる必要はない。
●議会の会議録への掲載については、
 議員の発言は重たいものであり、
 委員会で削除を決定するまでの言葉ではない。
●今回は発言者の意向を尊重したい。

理事会では、
自らの見解において、
以上のような趣旨を発言しました。

その理事会では理事の間で意見が分かれました。
●削除すべき
●本人の意向を尊重する
●委員長に判断を任せる
●差し替えるべき(←できないのですが…)

理事会では吉田委員から
差別用語ではないと考えており、
言葉を残してほしい旨の発言がありました。

結論として、
委員長より、
吉田議員の言葉を尊重して、
そのままとする旨の整理がなされたものです。

理事会での一連のやり取りについて、
私の議事進行が発端で
他の理事さんたちに
時間をかけさせてしまったのですが、
充実した冷静な議論と
それに基づく結論が出たことに、
有意義な時間をもつことができた、
と実感したものです。

言論機関である議会や
そこに席を置く議員の言葉は、
その命に等しいものです。
そしてそれが与える影響も様々にある。

言葉は生き物であることも実感しました。
以前は問題の生じなかった言葉が、
時代の流れで問題となるケースもあります。

言葉によっては
全く逆の意味となる言葉もあります。

今回を機に、
今後も慢心しないよう
常に気をつけていきたい、
と気を引き締めています。