• 「猫の手貸します」

ハチンソン先生の話の続編である。
再び昼食会で話をした際の話。

「あるイギリス人は、
 『上院』の存在の有無が
 議論となっているといっていました。
 先生はどう考えていますか」

と先生に聞いた。

道場に通ってくるイギリス人から私が聞いた話を、
ハチンソン先生にぶつけてみたのである。

ちなみにイギリスの国会は
下院と上院に分かれている。

上院とは日本の呼び名であり、
「貴族院」が正式な名称である。

ウィキペディア「貴族院」

下院は日本と同様で、
選挙で選ばれた人の集合体である。
正式には「庶民院」という。

ところで上院は、
日本の参議院とは似ても似つかぬものである。
上院はもともとの名士が永年で就任する。
選挙で選ばれるのではない。
つまり世襲である。

この仕組みが非民主的であるとのことで、
廃止を主張する向きがイギリス国内にあるというのだ。
2007年3月には、
族院に選挙制導入を求める決議案が
庶民院で可決されたとのことである。

日本の参議院は選挙で選出される。
最近はねじれ現象で少し息を吹き返しているが、
これまで、ほぼ衆議院と同様の構造となり、
形骸化していると指摘されてきた。
この参議院について廃止論が少なくない。

ある閣僚関係者が言っていたが、
「衆議院に説明したことと同じことを
 参議院でも説明しなければならない。
 これは壮大な時間の無駄をしていることとなる」
という面も持っているようだ。

先ほどの話に戻ろう。
ハチンソン先生にそのような
大胆な質問をぶつけてみた。
するとこんな趣旨の答えが返ってきた。

●上院は、無くさないほうがいい。
 (選挙制度は導入しないほうがいい) 
●上院は、下院の決定を独自の判断で制御できる。
●下院の政治の間違いについて、毅然とした物言いできる。
●たとえば、労働党支持の上院議員がいるが、
 労働党政権に対して一貫して厳しい批判を続けている。
 もし彼が選挙で労働党から選ばれたとしたら、
 政権に物が言えなかっただろう。

  
ここで取り上げたことは、
あくまでハチンソン先生の
個人的な見解である。
ただ、なるほどと思う。

私たちは、民主主義というものに、
もしくは選挙での選出というものに、
絶対的な信仰のような気持ちを持っている。

もし問題が起きたら、
それは個別の政治家の資質であり、
選挙という仕組み自体が問題なのではない。
選挙という仕組みは、
社会にとっては正しい作用を及ぼすはずだ…。
こんな思考である。

ハチンソン先生の話は、
選挙による選出の仕組みに対し、
どんな人が選ばれるにしろ、
政治サイドの自己制御は困難なため、
選挙で選出された議員に
毅然とした発言のできる機関、
下院を制御するための機関として
世襲による上院が必要だ、
ということだった。

安易にこうした機関を設けよ、
というつもりはないが、
日本の政治もこうした
イギリスの知恵から学ぶこともあるかも知れない。

これから貴族院を作るという話ではない。
保有資産の高低を政治家選出の基準とするのも
時代錯誤として却下されるだろう。

ここで言いたいのは、
イギリスもまた
現在の議会制度で様々な議論があるし、
日本でも参議院廃止論などがある。

現実を見つめるとともに、
その時々の役割を
見極めていくことが大切なのだろう。

ただ、どのように見ても
衆議院そっくりの参議院には、
存在意義はあるようには思えず、
この財政難の折、
廃止か、抜本的な改革が必要だと考えている。

       ★

11月24日

●自宅にて事務作業など
●ハチンソン先生を囲んでの昼食会
●明大大学院ハチンソン先生講義
 …「CO2」「アフォーダブル住宅」
●ハチンソン先生講義打ち上げ懇親会