■総合政策委員会・視察報告
■テーマ「地域振興に資する観光政策」
(今年度委員会の通年テーマ)
■日程&視察先:
【11月12日】①福井県若狭町「熊川宿」
【11月13日】②滋賀県長浜市「黒壁のまちづくり」
今回の視察は2か所を回ったが、
いずれも通年のテーマである
「地域振興に資する観光政策」
に関する場所である。
テーマ研究に関しては、
年度終了時に報告書を挙げるが、
さいたま市に還元する内容を盛り込む。
今回の視察も、
それを視野に入れてのものである。
両視察先とも、
担当職員からのヒアリングをするとともに、
まちづくりの現場を歩いた。
その模様は写真でご覧いただきたい。
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◆熊川宿
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伝統的な建造物群を保存することで、
観光地としての価値を高め、
年約40万人の観光客が訪れている。
平成8年に、
国の「重要伝統的建造物群保存地区」に
指定されたことに端を発する。
文化財でありながら
実際に住民が住む住宅でもある。
建造物の保存のために改修に制限があるため、
国・県・町でそれぞれ改修費の補助を行っている。
金額は800万円を上限とし、
全体の80%を公費助成するという。
交通の便は「車」が唯一である。
バスの客はあまり長時間の滞在はないが、
個人マイカー客はゆっくりする傾向にある。
この人たちが経済効果を生んでいるという。
今後、
①44%の高齢化率の現状
②子どもへの伝承
などの面で持続性に危機感があるという。
美しい街並みだった。
そして自然に囲まれてのんびりとしている印象。
それほど多くはないが、
観光を楽しむ人たちの姿が見受けられた。
たしかに儲け主義ではなく、
身の丈に合った雰囲気である。
さいたま市に還元するとすれば、
「文化財の活用」「空間の総合的な利用」
といった面だろう。
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◆黒壁のまちづくり
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ここは観光政策では有名な場所だ。
私も自治関係の雑誌で何度も目にしており、
一度訪れたいとかねてから考えていた。
実際に黒壁の商店街を歩くと、
平日の午前・昼間にも関わらず、
驚くほどの人出であった。
現在、年間200万人が訪れるこの商店街も、
昭和50年代には疲弊していた。
郊外には大型ショッピングセンター(SC)。
市街地の動態調査結果では、
「通行人4人と犬一匹(しか通らない)」
と言われたほどだ。
まちづくりの転機は、平成元年7月1日。
地域の住民やJC、行政が一体となり、
第3セクターを作った。
行政は出資のみ(5000万円)とし、
市民8人も出資。
その額一人1000万円。
合計1億3000万円のスタートだった。
もともと通称「黒壁銀行」
とよばれた百三十銀行の建物が、
キリスト教会としてしばらく使われていた。
あるときこの建物の
「取り壊し計画」が浮上する。
保存への取り組みが始まった。
この建物を「黒壁」とし、
①郊外大型SCと一線を画するもの
②地域の産業を圧迫しないもの(融合)
③視察に行ったメンバーの発案
というコンセプトや成り行きから
「ガラス」を基盤とした事業を行なうことと決めた。
特筆すべきは、
ガラスはこの地域に
まったく縁もユカリもないという点である。
黒壁から次々に派生し各種団体が誕生した。
現在は住民主体のまちづくりを行なっている。
まち全体を博物館に見立てた
「博物館都市構想」を根底に、
景観=公共財とし、
回遊性を持たせることにした。
また、誘客性を持たせるために
イベントを開くなどしている。
その結果、リピーター率5割を誇るようになった。
この商店街には、
飲食店からガラス店、カフェなど
様々な店が連なる。
黒壁のコンセプトを引き継ぐ店は
29店舗を数えるようになった。
今後の課題だが、
20年後を見据えたまちづくりを念頭に
「みらいまちづくり戦略会議」
で志民を広げる活動に踏み出している。
この商店街の活性化の要因の一つには、
この場所に足を運ばなければ、
見たり手に入れたりできないような
オリジナルなものが
存在しているところにあると実感した。
郊外店舗と勝負してもかなわない、ならば、
独自性に着目したということだ。
この点は大いにさいたま市でも学ぶべきだろう。