• 「猫の手貸します」

6月23日・24日の2日間、
総合政策常任委員会が開催された。

当委員会は行政の
●市長公室
●政策局
●総務局
●財政局
●経済局
を所管している。

2日間の審議の模様は以下のとおり。

【23日】

●議案審議…議案87号

恩給法の法律改正に伴う条例の改正。

条例文の文言の変更のみのため、
内容に変化はない。

市内で恩給の対象となっているのは5名。
100・92・88・88・83歳である。

政府系金融機関の改革・再編に
伴う改正が背景にあるが、
株式会社化した公庫がもし破綻したとしても、
恩給に関しての影響はないとの答弁。

審議の結果、討論はなく、
採決の結果、全委員が異議なく賛成した。

●議案外質問

議員一人10分(会派での分数の融通はあり)の範囲で、
所管の疑問点について、
行政職員に対して質問をする機会である。
本会議場で行なわれる「一般質問」の委員会版だ。

私は今回、2つの柱を立て、質問した。
①公会計制度の導入について
②民間団体への監視の強化について

である。

①公会計制度の導入について

今年度H20年度分の会計より、
企業会計を応用した
「公会計制度」が導入される。

「複式簿記」「発生主義」
といった特徴を持つもので、
地方分権が進む一方、
夕張市の財政破綻などの事例があって、
将来にわたる財政指標の状況を示すことにより、
財政規律を促す狙いがある。

外郭団体の連結などを柱とする
「財政健全化法」の導入と
流れを同じくするものである。

この公会計制度について、
今回の質問を視野に入れ、
今月2日に「浜松市」を私は視察していた。

ちなみに浜松市は民間人で
構成される行革審議会から、
公会計制度の導入を指示されたことを受け、
全国でも先進的に取り組んできた
自治体の一つである。

正直に言えば、
この会計制度は、
両刃の刃である。

有効に機能すれば、
将来にわたる持続的な財政の実現のために
資するものとなる。

しかし、有効に機能しないのであれば、
「国に言われてまた余計な仕事が増えた」
という前時代的なことを
繰り返すこととなりかねない。

私は、この会計制度の中で
「資産の評価」が
目玉の一つだと考えている。

行政が所有する「行政財産」「公有財産」。
市区庁舎や道路、上下水管など
税金で作られたものを指す。

これらの市の所有する資産は、
これまで正確な評価が
行なわれてこなかった。

購入時の金額での評価。
もしくは国が示した「耐用年数表」による
一律の耐用年数の評価。

直接現場を目にするわけではないし、
時価評価を行なうものでもない。

税金で作られたものは、
いずれ老朽化し、
どこかでメンテナンス費用や
新規建設費用を必要とする。

企業ではこれを見込んだ
「減価償却」という考えの下、
毎年その費用を前もって
配慮する会計手法をとっている。

ところが、
公的な機関でも資産の価値が下がることは、
同じにもかかわらず、
それをわかっていながら、
資産は実際の職員の目で確認されることはなく、
そのまま放置されてきた。

事故が起きたり、
壊れたりといった問題が生じたときに、
その年の会計で応急処置をするなどしてきたのが、
これまでのやり方であった。

これに対し、
今回導入される公会計の作成において、
資産を職員が直接目視するなどして、
正確な評価をしておけば、
●あと何年で新規建設が必要か判断できる
●メンテナンスの必要性の有無を判断できる
●建設費用などの財政支出が計画性を持ってできる
●その現場における安全へのチェックにつながる

などの効果があるだろう。

公会計制度の一番の目玉として、
この点を示し、
さいたま市の行政職員に質問した。

その結果、
●来年の導入には時間が限られている
●そのためまずは
 「売却可能財産」(土地など)
 の評価を優先して行なう
●その後、後年度においては、
 順次、正確な評価を行なうことに努め、
 台帳の整備を行なっていく
●その際には先進市の浜松市などを参考にしていく

という趣旨の答弁があった。

今後も、
できるだけ早い段階で
正確な評価が行なわれるよう、
注視していきたい。

②民間団体への監視の強化について

「ふじみ野市のプール事故」に
関する判決が出たことを
質問のきっかけとしている。

たまたま遊びに来ていた小学生が、
排水溝の金網が外れ、
その奥に吸い込まれ、
命を失った。
あってはならない事故であった。

その子自身や親御さんの気持ちに想いを馳せると、
いたたまれない。
この死を無駄にしないためにも、
事故の教訓を最大限汲み取りたいものだ。

その事故の原因は、
民間業者の「ずさんな管理」にあった。

ふじみ野市担当職員
  |
下請け業者
  |
孫受け業者

金網は本来ボルトで
固定しなければならないのだが、
針金で応急処置をしたまま、
放置されていた。

この裁判が衝撃的なのは、
現場の業者が「書類送検」ですんでいるのに対し、
それを所管する担当職員が
「禁固刑」とされたことだ。

現場のずさんな管理は罪が軽く、
行政職員の管理・監督責任が問われた。

この裁判に限らず、
行政職員の民間団体の監視の役割を、
司法(裁判所)は、
「重く見ている」のがここ最近の傾向である。

今、さいたま市を含め、
全国の自治体が、
公共サービスの担い手を、
行政が独占するのではなく、
民間業者や組織・団体に
任せていこうという流れにある。

指定管理者制度や市場化テストなどは、
その具体的な取り組みの現れである。

私はこの流れは
所与のものとして受け止めており、
反対するものではない。

しかし、行政には「コスト削減」効果
が期待できるどころか、
行政職員が今まで以上に
民間を監視・評価する能力を
身に着けることが求められるなど、
よりコストがかかるケースも
あることを視野に入れなければならない。

ふじみ野市のプール事故の
地裁判決が出たこともあって、
これを機会に、
さいたま市行政において、
公共サービスの提供に関して協働している
民間団体に対する監視能力の強化について、
確認の意味で質問したものである。

その結果、書類審査だけではなく、
現場に赴いての監視もしていく旨の答弁があった。

何よりも「慣れ」が恐ろしい。
チェックをする立場の職員が
その緊張感を失ったときに、
すぐさま、ミスが生じるなどして、
市民生活に不利益がもたらされる。

私は質問の最後に、
「この裁判の判決に、
 行政職員は衝撃を受けているだろう。
 司法は現場を任される民間団体よりも、
 監督責任のある行政に厳しい判断をした。
 これを機会に監視機能に取り組むべきだ。
 これは行政職員のためだけではなく、
 その先にある市民への安心や
 水準の高いサービスの提供のためでもある」
「監視をする際には、
 民間のいいところまでを妨げないような、
 ぎりぎりのラインで取り組んでほしい」
という趣旨の言葉を述べた。

       ★

今回の議案外質問は、
お互いに積極的に発言をしていこう、
という趣旨を汲み、
8人の議員が質問し、
実に約3時間近くにわたってやり取りが行われた。

【24日】

この日は、一年をかけて行われる
「所管事務調査」について、
●今後の調査やその成果の公表、
 スケジュールなどの協議・確認
●行政職員からのヒアリング
が行なわれた。

今回のテーマは
「地域振興に資する観光政策について」。

各会派ごとに提案された調査項目の提案が、
反映されたものである。

この日、すすめ方に関する活発な議論や
ヒアリングが行なわれた。

行政職員からのヒアリングでは、
●商工振興課
●観光政策室
から現在の事業の説明が行なわれ、
それについて各委員かから質問が出された。

この一年をかけて調査し、
その結果「提言」などに結び付けることが
視野に置かれている。

この試みの特筆すべきは、
行政職員にお世話になるのではなく、
それはヒアリングなど最小限にとどめ、
議員間の討議を原則とし、
民間の現場に足を踏み入れるなどして
調査し進めていこう、
とお互いに確認したことである。

議会も本当に変わってきた。

私も乗り遅れないよう、
最大限の役割を果たせるように
常日頃の準備を怠らないようにしなければならない、
と気持ちを引き締めている。

       ★

以上が総合政策委員会の報告である。
昨年まで(つい数ヶ月前まで?)は、
委員会はほぼ一日で終了していた。

内容も、議員と行政職員のやり取りが主であり、
議員間の討議はほとんどなされなかった。

まったく熱を帯びていない
形骸化したものだった。

しかし今回の審議を見て、
議員が自らの主体性を持って
時間をかけた調査や検討がなされ、
市政運営に貢献していく
第一歩が踏み出されたように感じている。

議会改革の効果が、
早速、出てきたようだ。