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■「『法令遵守』が日本を滅ぼす」
■郷原信郎
■新潮社

検事出身で、現在は桐蔭横浜大法科大学院教授の著者は、
現在、多用されている「法令遵守」の考えを紐解き、
あるべき方向性を提示している。

●法令の背後にある社会的要請を読み取ることの重要性。
●法令の大部分が官庁の下にあること。
●官庁は官民の人材交流がなくなってきたために
 現場が見えにくくなっていること。
●マスコミは当局のご機嫌伺いをして、
 鵜呑みにして報道していること。
こんな日本の現状を示している。

日本の法律は「象徴」であり、
法律家は「巫女」のような存在だ、
と述べている部分はわかりやすい。
一般の人にわかりにくいことがそれを示している。

法律を守るのは大切だが、
その背景にある社会的要請を見誤ってはならない。

事故被害にあった家族に対し、
個人情報保護法を盾に収容の有無を明確にしなかった病院において、
「法令遵守」があまりに頭にあったために、
「社会的要請」を見失った事例を示している。

著者は、こうした現状を解決するために、
「フルセット・コンプライアンス」
という考え方を提示している。

規制緩和の流れの中で、
個人も企業も自己責任で
自由な活動が保障される時代となり、
その分、意思決定においては
社会的要請に向き合わなければならなくなった。

ただ、この社会的要請が複雑・多様化しているので、
これに応じるのは容易ではない。

そこで組織がどうしたら社会的要請に応えられるか。
「組織としての方針を具体的に明らかにすること」
など5つの点を上げている。

組織作りに完成はなく、
そのつど常に見直していくことの重要性も説いている。

また、組織が急激な社会的要請と
周囲の環境変化をすばやく認識する鋭敏性が不可欠で、
組織の構成員全体がその鋭敏性を持ち合わせ、
これが組織全体に高まっていくことの必要性を説いている。

これを「眼を持つ組織になる」と表現した。

       ★

これからの日本社会を志向する上で、
貴重な提言だと思われる。

法令遵守の本質は「社会的要請に応える」ことであり、
そのために常に周囲に気を配っておく
個人の存在が必要であることを認識することができた。