• 「猫の手貸します」

■『死にカタログ』
■寄藤文平 大和書房

様々な死のカタチを描いている本である。

思えば、
人間に「絶対」というものがあるとすれば、
それは「死」である。

著者は、ユニークなイラストで人気を博している。
著者は、キューブラーロスの
『死の瞬間』に感化されたというが、
ここで描かれているのは、
死が「深刻なもの」だけではない、
様々な死のカタチである。
イラストとあいまって、
肩に力を入れずに読める「死」についての本だ。

死後、「何もない」「色々な世界へ旅立つ」
などの死に対する考えの違いはあるが、
この世界においては「死」をもって終わりとなる。

私は、死を持って精神世界は終了すると考えているが、
ジプシーの「いなかったことになる」生き方などは、
面白く感じた。
先日読んだ元アメリカ国会議員の
「マイク・マンスフィールド」についての本によれば、
生前、マンスフィールドは
「どんなことを記憶されたいか?」と記者に聞かれた時、
「早く忘れてほしいね」と答えたという。
この逸話に通じるものがある、と思ってしまった。

あとがきに書いてあったが、
「いつ死ぬか」ではなく、
「どこで生きるのをやめるか」
これを考えておく必要がある、
との著者の考えには、
強く共感するものがある。

突然の死ということよりは、
どこまで生きるか、
と覚悟を決めておいたほうが、
はるかに人生を効果的に使えるような気もする。

死を持って終わる。
だからこそ、
他人の命は大切にし、
自分の生きている時間も大切にする。
そして、次の世代に生を保証できるようにしたい。
そんなことを強く考える今日この頃。

また、死の瞬間、その直前、
私たちの社会では
「豊かな死」を迎えることはできないか。
こんなことも改めて考えている。