何日間かかけて、
■『宇宙で地球はたった一つの存在か』
■松井孝典編著 ウェッジ選書
を読んだ。
地球や宇宙について、
これまでの研究の結果、明らかになったことが
何人かの学者によって述べられている。
「人間圏」という言葉が出てくるが、
人間が誕生して今日に至るまでの時間は、
地球や宇宙の歴史からすれば、
ほんの短い時間に過ぎない。
あるとき、地球圏に新たに人間圏ができたのである。
日常生活が営まれているニューヨークが、
急激に凍りついてしまい
機能不全となっていく状況を描いた
『デイ・アフター・トゥモロー』
という映画があるが、
決して荒唐無稽な話ではない、
という言葉は衝撃だ。
つまり、私たちが天気予報で
見て一喜一憂しているのは、
ほんの短い時間のデータを下に
しているのであり、
何時氷河期が来るとも分からない。
いつ何時、何が起こるかわからない、
ということなのである。
本書では、急激な人口増加、
つまり人間圏の急激な拡大が、
私たちを取り巻く地球システムと
調和が取れるわけがない、
という点に環境問題の本質を見出している。
江戸時代までの地球システムとの調和的な生き方、
その後の産業革命において、
化石燃料を駆動力として人間圏が拡大したという分析。
本来地球上で起こる変化は
ゆっくりしたものだったのに、
人間圏が独自の駆動力を持ってしまったことにより、
物の流れが速くなり、
これによって引き起こされる環境の変化に
人間は対応できなくなっている。
「問題はその変化の速さ、
すなわち時間なのです」
そして、人間の欲望をいかに
コントロールするかという話につながるが、
人間圏の本質ともいうべき、
右肩上がりの共同幻想を捨てる
困難さにも触れている。
最後に、
「まったく違った価値観の方向へ
行かない限りは未来はない」
「人類が宇宙人(中略)である
という認識を持つこと」
「宇宙人が物事を考えるときに
拠って立つ考え方によって物を考える」
「宇宙において普遍的な文明は、
必ずそういう道を進むはず」
という提案がなされて本書は終わる。
こうした感情論を排した分析が
淡々と述べられており、
それだけに説得力がある。
本書を読み進むにつれて、
人間がいかに小さな存在か
を思い知らされる。
環境問題への貴重な視点も得ることができた。