• 「猫の手貸します」

ここ何日かで読んでいるのがこの本である。

■『ブレア時代のイギリス』
■山口二郎・岩波新書

本著では、イギリスで
現政権を担うブレア労働党政権が、
長い野党時代をどう脱したのかを
冒頭で分析する。

サッチャー率いる保守党によって始まった
イギリス病への改革。
財政改革に切り込んだものの、
機会の均等の発言と
現実の成果との乖離が生じていた。
保守党の政策により、
改革の入り口には入ったが、
実際の国民生活の現場は混乱を生じていたのである。

労働組合や左翼を支持基盤にしていた労働党は、
内部の議論を国民にさらけ出し、
ブレアはその中で党首に上り詰めた。
この過程で労働組合の政党から国民政党へ脱皮した。

こうした労働党の国民政党への変化とともに、
保守党の失政を見た国民は、
1997年の総選挙で18年ぶりに政権を与えた。

サッチャー率いる保守党の残したいい面は継承し、
機会の平等を実質的に確保するべく
様々な施策を展開した。

それは以前の労働党の「弱者救済」ではない。
分配のための「富の創造」を重視し、
人々の依存心を助長するのではなく、人々が自立し、
社会に参画することを後押しすることこそが
「政府の役割」であるとして、
この考えに沿って新しい施策が行なわれたものである。

子育てや自立支援、教育、など様々な分野に及ぶ。
評価に加えて課題も指摘されている。

本書ではこのほか、
ブレアが、アメリカのイラク戦争を
なぜ支持したのか、を含めた外交政策、
ブレアや労働党のメディア戦略、
労働党の柱となっている「第3の道」の分析などにも、
触れている。

小泉政権が現在行なっている改革は、
イギリスに置き換えれば、
サッチャー段階の改革だといえるかもしれない。

もちろんイギリスと日本の政治風土
などの違いはあるが、
日本の政治、とくに民主党はじめ
野党的な立場にある政治勢力は、
労働党がなぜ政権に就くことができたのか、
ここから学ぶべきところも多いのではないか。