• 「猫の手貸します」

男性たちよ!もっと気概を持とう!
そんな心の声を上げたくなるような、驚くべき話を聞いた。
私は武道とは人生の半分以上の付き合いだ。
えてして武道の世界では
「女性は守るべきもの」という認識がある。
弱い立場の人を、体を張って守る、
という自己犠牲の精神である。
それはそれで、
「力」の及ぼす事態が生じた際においては、
あてはまるのだろうと思う。
しかし。
男性たちよ!と叫びたくなるのは、
そんな自分の経歴があるからではない。
私は、市民運動、
それも女性解放運動の猛者のような方々とも
様々な交流をさせていただき学んできた。
現在の議会内で私が所属している会派も、
私ともう一人の議員2名を除き、女性議員が5名。
自宅の構成でも、母に妻、猫が3匹中2匹がメス。
私が現在生きている環境は、
とても男が肩で風を切って歩けるような環境ではない。
女性の実力も、生活の実体験に基づく正義感も、
男性に勝るとも劣らない光景を何度も見てきた。
女性への社会的な差別については、
早く解消するべきだとすら考えている。
さいたま市議会に列席する行政側の幹部が
男性のみで構成されていることをみると、
決していいことだとは思わないのである。
そんな私が、なぜ「男性たちよ!」と叫ぶのか。
それは、つい先日、
大手新聞社の女性幹部のAさんと懇談をした際の話である。
現在幹部の立場にあるAさんは、女性記者の走りだった。
若かりし当時、女性は現場に送ってもらえない時代だった。
社内のデスクワークに専念させられていたのである。
明らかに女性は狭い枠の中での仕事を余儀なくされていたのだ。
当時のAさんは、食い下がる。
現場に送ってほしい、現場で取材をしたい、と。
やっとの思いで、「サツ周り」などの仕事ができるようになった。
その後、海外の特派員も経験し、
現在は編集委員という幹部の立場に立つ。
そんな話を聞き、
今でもまだ、女性に不利な環境は存在しているのですか、
今はもうそんなに不利な状況ではないのでしょうね、
などといった話題に移った。
すると。
Aさんは思いがけないことを言った。
少し話は飛ぶが「会社の入社」についてである。
「今はもうほとんどが優秀な新入社員を探すと
 女性ばかりなんです。
 男性には配慮から、少し下駄を履かせて入社させてますが、
 実態はもはや燦々たる状況です…」
「すでに起こった未来」とでもいうべきなのだろうか。
女性の時代、女性の実力社会は、
すでに到来していたのである。
この会社の話だけかといえば、そうではない。
別の機会にも、最近の大学生の動向については、
リーダーは決まって女性だ、と教授らに聞いたこともある。
Aさんの話はそれを裏付ける話だった。
若い世代の中には、
すでにそうした空気が充満しているのだろう。
これは良いとか悪いとかの問題ではない。
時代が変わったということだ。
ただ、ちと、一気に変わりすぎのような感じるもするが…
よく考えれば、私たちの若かりし頃でも、
すでに女性の実力、潜在的可能性は、
低いものではなかったのかもしれない。
当時の社会的な「常識」や「ルール」が、
女性の可能性を失わせていただけであって、
時代とともに、そうしたものが取り払われるに従って、
可能性を生かして実力を身につけ、
男性に勝るとも劣らない
女性たちが台頭しているのだといえる。
ただ、女性が台頭して、男女が拮抗している、
というのなら納得できるが、
優秀な人材が女性ばかりだ、
といわれると、驚愕である。
子どものころからの家庭での育ち方の問題なのか、
男性の一人として、
何か強い危機感のようなものを感じる。
男性たちよ!もっと気概を持とう!
これは自戒を込めた心の叫びであった…