• 「猫の手貸します」

TPPの迷走は著しい。
私は、「慎重な賛成派」である。
グローバルな国際環境が進む中、
日本だけ貿易交渉の土俵に上がらない、
という選択肢はない。
知人の若手農業従事者の、
志ある積極的な声も
私を賛成の意見に後押ししている。
ただ、現在のようなアメリカのリードのもと、
お伺いをたてながら参加するのはいかがなものか。
自らの強い意思で参加する形でなければ、
この交渉がうまくいくはずはない。
最低条件として、国内の合意形成を経て、
覚悟の上でスタートラインに立つことが不可欠だ。
これらの留意点の整理が必要、
ということから慎重である。
TPPに関する私の考えはここまで。
さて。
私はこのTPPの迷走ぶりから、
もはや二大政党制は限界を迎えてる、
と考えるのだ。
参加を表明した野田首相の記者会見では、
強い意思は感じられなかったし、
そもそも国会では国民に選択肢が
提示されるような議論はなされなかった。
国民的合意に至った、
というだけの手続きは経ておらず、
まだまだ今後も一進一退の様相を継続するだろう。
リードするはずの民主党は、
一時、離党に言及する幹部の存在を象徴として、
かなりの数の反対の意思の議員が
在籍していることが示された。
野田首相の奥歯にモノの詰まったような発言。
党内融和や支持基盤の団体に向けた
発信だったから響かないのだ。
この点。
私は郵政民営化を一貫して唱え続けた
小泉元首相は潔かったと思う。
大きなリスクを抱えてでも覚悟を決めて戦った。
ここに国民が共感したことが、
歴史的な選挙結果を導いたのだ。
政治家はここに学ぶべきものがある。
では、一方の自民党。
また先祖返りか、とあきれるばかりだ。
待っていれば政権は転がってくるから、
支持基盤を固めておこう、
という腹はみえみえである。
TPPに反対なら、それは一つの見識だ。
しかし、このTPPは
今後の日本の進路を決定付けるような、
重要な決断を求められるもの。
「参加しない」という決断もまた、
重要な機会を喪失する可能性を含んでいるわけであり、
賛否どちらにしても丁寧な説明を必要とする。
後継者難の農業の改革もグローバル経済下の戦略も、
自民党の反対論に付随していないことが、
場当たり的な姿勢を際立たせている。
この中で光るのが小泉進次郎議員だ。
「決断が遅すぎる」
と自民の大半の意向とは正反対の発言をし、
委員を差し替えられるという目に遭った。
彼はまた、株をあげた。
自民党の内部も一枚岩ではない。
こうして二大政党制の責任を負うはずの両党とも、
党内の意見が分断されたまま、
重要な決断の時期を迎えた。
にも関わらず、
国民に明確なメッセージを発信できていない。
それどころか返って不安だけを届けている。
私は、何も党内の意見が
すべて一致しなければならないというつもりはない。
むしろ大所帯になるほど
多様な意見が存在することを理解している。
問題は
●これまでの政策決定プロセスを
 国民に向けて開いていないこと
●支持基盤への配慮から、決定に及んでもなお、
 党内の意向を集約できず、大混乱に陥っていること
●何よりリーダーである首相が
 明確なメッセージを発信できていないこと
こうした点があげられる。
シンプルに考えたい。
日本の政治は、イデオロギー対立の時代を終え、
今後の進路や執るべき政策に関する選択肢を、
各政党の発信を受け止めた国民が
選挙で選択する時代に入ったはずだ。
もはや自由主義と社会主義の代理戦争の時代ではない。
国民が選択できるに足る材料を、
両党は示すことができたのか。
建設的議論をリードできたのか。
二つの明確な選択肢すら
示すことができていないではないか。
小政党の方がよほど意思を明確にしている。
もし。
多党制で様々な政党が存在した場合、
もっと明確な政策の発信を
各党が早い段階から行っていたのではないか。
その上で連立の組み合わせを巡り、
政治主体が離合集散するが、
各党間のやり取りは国民にさらされる。
そのプロセスに国民の意見がフィードバックされ、
更なる政治主体の合意形成が図られる。
こうして錬度の高い政策が造り上げられていく。
現在、もはや民主も自民も、
同じものが二つ存在しているように見える。
内向きな政治的駆け引きにより、
国民に示さない形で党内の合意形成を進め、
国会を乗りきろうという発想は、
この時代の政治主体としては失格だ。
この一連の流れを見て、
私は二大政党制の限界を感じざるを得ない。
「二大政党制が機能するまでにしばらく時間が必要だ」
そんな意見を数多く聞いてきた。
しかしそろそろ小選挙区制による
二つの政党の政権選択方式では、
前に進まないことを自覚するべきだ。
国民は充分に学習してきている。
私はあまり、制度論を振りかざしたくない。
どの制度も一長一短のところがあることは承知している。
ただ、現在の政治の停滞の原因の一つは、
確実にこの制度により、
もたらされていると確信している。
新たな人材も供給されにくい。
二党の既得権があまりに大きい。
返って重要な議論が先送りされる傾向が強くなった。
さて。
国会議員の有志により、
「中選挙区制度」の検討が始まったという。
私はぜひ、全国比例の制度なども含め、
今後の国益を念頭に、
国民により進路や政策の選択が為される仕組みを、
早急に検討し実現してほしいと願っている。
ささやかながら私も声をあげていきたい。