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「人間には自治の本能がある」
「自治」を考える際、最も説得力を持つのが、
いま旬の人、後藤新平のこの言葉だ。
自治が人間の「本能」に基づくもの、という。
自己の生命を衛ろうとするすべての生物に共通する
生存本能というべきものから発するのが「自治」意識であり、
人間のみならず生物一般に普遍的なものである(※)。
我々自治体議員は、
自治にこそ、その役割を果たす立場にある。
議員となって10年。
私は、様々な自治に関する著書に触れてきた。
が、理論的で頭でっかちなものは、
どうも腑に落ちないところがあった。
現実との解離は増すばかりであった。
そもそも…なぜ自治が必要なのか。
しばらくの間、
根幹をなす最も大切なこの問いが、
頭から離れなかった。
冒頭の後藤の言葉と出会った時、
その答えがようやく見つかった想いがした。
後藤によれば、
「人間は生活を拡充させ、向上させる権利を持」ち、「自己単独では生存できない」ため、「隣人とともに団結してはじめて拡充させ向上することが可能」
だとのことである。
個人が自治の本能を意識し、
団結することで自らの生活を拡充し、
向上させることができるのである。
自治とは、あらゆる課題や政策、
私の自身の言動の根幹に位置するものであり、
全てに通ずるものである。
さて。
私はこの夏、バスクを訪問した。
ビスカヤ県の議事堂で遭遇した「樫の木」。
このバスク自治の象徴を前に、
議事堂の職員から、かの地の人々が、
時に命をかけて自治を守ろうと生きてきた歴史を耳にした。
それほどまでに自治とは、
身近でありながら命をかけるに値するものなのだろう。
18世紀の自由主義思想のスペイン政府に完全に自治を奪われ、
その後もフランコ政権の間、自治は返上を余儀なくされた。
言葉も奪われたのである。
今、バスクは言葉を取り戻し、独自の徴税権を得るなど、
スペインの他の州に比べて自治的要素が強い。
不断の取り組みが続いているとのことだった。
日本の社会は転換期を迎えているが、変化はチャンス。
未曾有の大震災や原発事故も、
次の日本に生まれ変わるチャンスととらえたい。
その「次の日本」には、自治が欠かせない。
この点、もっと深くこだわり続けたいものだ。
締めくくりに、
再び後藤の言葉を引きたい。
「自治三傑」と言われる
今後の私たちの生き方の基本となる考えである。
「人のお世話にならぬよう」
「人のお世話をするよう」
「そして酬(むく)いを求めぬよう」
※『自治』(後藤新平著 藤原書店)より