• 「猫の手貸します」

九州のある町。
何度も足を運んだ。
雄大にそびえる阿蘇の峰の絶景の広がる、
農業の町である。
ここに暮らす政治の刷新を求める人たち。
古い流れを変えようと汗を流し、
自らそのための挑戦を続けてきた。
が…
ことごとく、夢は破れてきた。
町は過疎化し、展望が見いだせないままだが、
しかし農家が大半を占めている民意は、
「このまま」を選択してきた。
そんな現状維持の町。
ところが、この度。
この町に新たな風が吹き込んだ。
この統一地方選挙で新たな首長が誕生したのだ。
現職を破り、新たな町政を約束した候補が誕生した。
東日本の震災の影響も、
この町では無縁、
少なくともほとんどなかっただっただろう。
だから、震災の一時的影響によるものとは考え難い。
かといって豊かではないものの、
夕張市のように破綻したわけでもない。
この政変。
いわば無血革命に匹敵するものかもしれない。
選挙は革命を制度化したもの、という話もあるが、
それを裏付けるようなことが起きたのだ。
改革を訴えてきた人たちは、
絶望し、希望を失いかけていたようだが、
結果は思わぬ形で出たという。
こうして政治に見られる新しい潮流は、
都市部の専売特許ではなくなったようだ。
都市部には納税者が多く、
納税の義務を果たしているわりには、
公共サービスの恩恵を受けている、
という実感がほとんどない。
「税金の使い道を正せ」
という声無き声が聞こえてくる。
だから常に現状に厳しい層が存在している。
無党派層と呼ばれる人たちが
これに該当するのだろう。
一方の阿蘇のこの町を含め、田舎にいくと、
無党派層の数は極端に少なくなる。
だから、これまでとは異なる
投票行動をした人が多かった、
ということとなる。
私は思う。
もう期は熟しているのだ。
有権者は新たな潮流を求めているのだ。
もはやどの地にいても、
この流れはとどまらないのだろう。
あとは政治の場にいい候補、
信頼に足る候補がそんざいするかどうか、
ここに課題があるのだと思う。
鶯の鳴くこの春の日、
40歳を前にこんなことを考えた。