• 「猫の手貸します」

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■『極北に駆ける』
■植村直己
■文春文庫

2月議会準備中にて、それほド時間がとれず、まだ全部読み切ったわけではない。それでも、息抜きに、と手に取った本はまあ、これは本当に引き込まれた。言うまでもなく、著者は世界的冒険家。北極点到達までの手記である。著者は犬橇(そり)での実行を目指す。まずは郷に入れば郷に従え、とエスキモーとの生活に踏み出すところから始まる。最初に、エスキモーたちが家に泊めてくれなければ、地面を掘ってそこにでも寝るつもりでいたものが、実際には、地面が凍りついて硬すぎて掘ることができず、気に入られるためにラジオ体操を必死にやるところから始まる。受け入れられた後、口にした生肉のエピソードには、こちらも吐き気がするほどだったし、その後しばらくすると、著者の思いと同じくして、生唾を飲み今ほどおいしく思えたり。犬橇をいざ率いるも、犬たちは一向に動かず。その犬たちに活を入れるつもりで放ったアザラシの皮で作られたムチは、肝心の犬のお尻を素通りして、自分の顔面をとらえる。目から火花が出る想いを共有できる。まだ読んでいる途中なのだが、議会もあるため、ここらで断念。これからいよいよ北極点を目指す旅が始まるのだが…著者が隣で、お酒でも飲みながらその時の出来事を語ってくれているような、読み始めたら止まらない本だった。すでに鬼籍に入った冒険家の、純粋で前向きな人生を垣間見た。時間と場所を超えて、貴重な体験が伝えられる面白い本である。