• 「猫の手貸します」

八年前の夜。

ようやく慣れてきたコンビニバイトの始まった直後。
夜10時過ぎのことだった。

レジに来たお客さんは興奮気味だった。

「飛行機が突っ込んだ!知ってる?」

何のことだかさっぱり解らず。

内心、
「厄介なお客さんに当たってしまった…」
と思った。

思えば、その頃調度、
ニューヨークのワールドトレードセンターに
二機目が突入した頃だったのだろう。

日が替わる頃、一度目の休憩時間となる。

その時にテレビの映像を初めて見て、
尋常ではないことが起きていることを知った。

朝8時に仕事を終えると、
恒例の立ち読みもせず、
一目散に帰宅。

あとは、家族のいない部屋で
一人テレビを見入っていた。

何度も、繰り返し同じ映像が流れたが、
その衝撃の興奮状態が収まることはなかった。

あれから八年。

このテロ事件について、
いろいろな人がいろいろなことを語った。

「原因は世界のグローバル化である」
「宗教的な価値観の違いが背景にある」
「資本主義の負の側面がもたらした」
などなど。

消防士の美談は、
後に日本の国の志ある消防士の誕生に寄与した。

中には前大統領らの陰謀説まで出てきた。

溢れ出るほど語られたこの事件の話だったが、
私にはハッキリと理解が出来ないまま、
今日を迎えている。

三年前には直接「グランドゼロ」に足を運んだ。
その光景は今も鮮明に残っている。

それでもこの事件のことが、解らない。

なぜ犯人は、あんな方法で自らの命を絶ったのか。

飛行機の中で最期を迎えた人達の内面はいかばかりだったか。

ビルの最上階に残された人たちは…

歴史的に見て、
この事件の意味するものは何か。

重たい衝撃を今も抱えたまま、
八年目を迎えることとなった。

ただただ犠牲者の冥福お祈りするばかりである。