• 「猫の手貸します」

夕張市立総合病院を引継いだ
「夕張希望の杜」の毎日

というメルマガがある。

改革派としての実績を持つ
前佐賀市長・木下敏之さんが発行している。

財政破綻した夕張。
医療環境もまた、
存続の危機に瀕している。

そんな状況に果敢に挑戦をしているのが,
地域医療の立役者・村上智彦医師ら、
志ある医師や看護師たちである。

このメルマガは、
その村上医師・看護師ら
夕張希望の杜職員有志やその他応援団が、
ボランティアで記事を寄稿している。

特筆すべきは、
メールマガジンに広告を取り、
経費・税金を差し引いた残りを全額、
夕張希望の杜に寄付する
こととなっている点だ。

現場で汗を流す志ある人たちに、
少しでも協力したいものだ。

メルマガに登録することが、
直ちに現場での取り組みへの貢献となる。
ぜひご登録願いたい。

夕張市立総合病院を引継いだ
「夕張希望の杜」の毎日 
登録ページ

ところで、このメルマガの最新号(配信第26回)に、
ぜひご覧いただきたい記事があったので、
ここに転記させていただく。

■村上智彦が書く、今日の夕張希望の杜

< モンスター  >
モンスターペイシェント、モンスターペアレンツ、モンスターハズバンド等最近モンスターと呼ばれる人たちが増えてきているようです。権利意識が強く、社会的常識が無く、自己中心的で不安を訴えてその矛先を病院や学校の先生、警察官や役場の職員等に向ける人達の事だと思います。

マスコミの報道やインターネットで見ていると信じられない話がたくさん出て来ています。医療には不確実性があり治療をしても100%治るわけではありませんが、結果が思わしくないとどんなに丁寧に事前に説明しても「聞いていない」と訴訟をする人。病院が混んでいるからと外来から救急車を呼ぶ人。トイレットペーパーが切れたとかゴキブリが出たからと警察を呼ぶ人。子供が学校で怪我をしたことに対して「怪我をさせたら責任を取って辞めます」と先生に誓約書を書かせようとする親。「子供のおむつ替えは保育所でやれ。そのために会社に遅刻したら損害賠償する」という親。高級車は買えても給食費を払わない親等程度の差はありますが、いずれも今までの日本人には考えられないような話です。

夕張で医療を始めた時にも色々な事がありました。「自分は難病なのだから薬だけ受診を認めろ」「患者の欲しい薬を出すのが病院の仕事だ」「24時間好きな時に専門医にかかれるのが患者の権利だ」等働いている現場の職員が疲弊してやる気が無くなる様な行動や発言をする人が沢山いました。

救急車の使用も明らかに緊急性はないのに「タクシーではお金がかかるから」「救急車を呼べば待ち時間もなく入院出来るから」等と公言して使う人が沢山いました。しかし大声を出す人に限って病気の自己管理が悪く、検診も受けないし医療費を踏み倒す人が多いという印象があります。

病院や学校、役場などはこの手の発言に意外に弱く、真剣に対応しようとしますが、その時間やエネルギーをかける事で
常識的に振舞っている人達に迷惑がかかります。言い換えれば頑張っている人達が報われないで、自己中心的な人達が得をする世の中になってしまうように思えます。

夕張ではこの手の権利意識の高い人達に対して毅然と対応して来ました。他の町と違い破綻していた事で、対応するだけの人的、経済的な余裕も無かったのですが、「必要のない薬は出しませんし、皆さんの税金で守られているので大切に使って下さい」「救急車をタクシー代わりに使うのは無駄遣いです」「決まりを守らないから破綻したので守りましょう」
「他の人の迷惑を考えましょう」「医療機関が無くて困るなら自分の町の医療機関を使いましょう」等 明らかに営業的には好ましくなく感じますが、施設の運営ができなくなれば地域の医療機関は維持できないですし、どんなに求めても医療資源は有限です。

1年間この様な対応をしてきましたが、患者さんが減るわけではなく、むしろ普通の真面目に医療機関を使っている人達が通いやすくなる様で患者さんが増えています。救急車の出動も時間外受診も激減しましたが、重症者や死亡者はむしろ減っています。

医療は目的ではなく生活のための手段ですし、医療機関は病気を治す場所であって不安や不満を解消する場所ではありません。不安や不満を解消する一番の方法は自分自身が知識や常識を持つことで、情報を得る場所は必ずしも医療機関だけではないと思います。

日本のように他の国と比べて少ない医療スタッフで支えている場合には、本来の業務以外の仕事を増やすと壊れてしまいますし、特に人員の確保が難しい地域の場合はさらにその可能性は大きくなります。

公共サービスや医療機関を住民が自ら壊しておいて、その責任を国や行政に押し付けても二度と再生はできません。医療機関に限らず自治体の公共サービスは有限ですので、住み慣れた地域に住むためには義務として住民が他の人の事を考え、大切に使う事が求められていると思います。そんな住民であれば、行政や国の不作為に対して説得力を持って交渉できると思います。 夕張でさえこの1年で随分変われたのですから、他の町でも可能だと思います。

制度の不備や国の責任を問う事も大切ですが、地域を守るためにまず自分の出来ることから始めたいと思います。