• 「猫の手貸します」

12月16-17日
法事のため広島へ。

     ★

夕食後、酔い覚ましに市内中心部を歩く。

商工会の主催と思われる
平和大通りのイルミネーションは、
子供連れの家族やカップルたちでにぎわっていた。
道路が広いとこんなイベントもできるのか、
と半ばうらやましく眺めた。

繁華街は、これはもう大変な活気だった。
21時を過ぎているというのに。
人があふれんばかりにいた。

商店街で音を奏でるストリートミュージシャンは、
どうみても「おじさん衆」であった。
広島出身の吉田拓郎を演奏していた。
若手だけでなくおじさんも
全国でがんばっているのだなあ、と感心した。

路面電車の走るとおりに出ると、
人手はそれほどいない。
それにしても路面電車は絵になるなあ。
単なる移動手段にとどまらず、
そのまちの風景の一部を形成する。

広島球場へ。
もう22時30分だというのに、
照明がつき、アナウンスが聞こえる。
「2番、セカンド〜」
何事かやっているのかと思い、
引き返して入口の警備員に聞く。
「何もやってないよ」
どうやら場内整備や調整、
試運転をしているようだった。
そういえば球場の移転話はどうなったのだろう。
「樽募金」で話題になった。

来年こそは広島カープにがんばってもらいたい。
近年は振るわないが、
今年は黒田投手が万難を排して残留を決めた。
いいやつだなあ。
今年も孤軍奮闘していた。
他球団からの高額の誘いを断り、
自分を育てててくれた恩を返したい、
と来年も広島で選手を続ける決断をした。
まずはBクラスからの脱出だ!!

平和公園に差し掛かる。
まずは「原爆ドーム」。
すでにこれまで何度も訪れたが、夜の訪問は初めて。

多少のライトアップで演出されている。
ドームの裏側に高層マンションが建つ、
という話はいま、どうなったのだろう。
平和公園内へ。
ヒト気はほとんど無く、
寒さが頬を伝う。
パラパラと雨が降る。

全国からの千羽鶴が
展示されている少女の像の前。
心無い人によって、
折鶴が焼かれたことがあった。
その影響でビデオカメラが設置されたようだ。
ビデオカメラの設置自体、
あまり気持ちのいいものではないが、
ヒトの気持ちを踏みにじる輩が
存在していたことから、
止むを得ないのだろう。

公園中心部のモニュメントの前。
若い女性がじっと座ったまま動かない。
お祈りをしている。
ご遺族が眠っていらっしゃるのだろうか。
かなり長い時間だったように思う。
その方が去った後、私も黙祷。

公園の南端である
原爆資料館に向かって歩いていくと、
どこからか、サックスフォンを吹く音が聞こえる。
ささやかな明かり。静かな空間。
広大な公園の敷地。小雨が降る空模様。
ヒト気の無いところで、一人演奏する奏者。
不意に平和公園における過去の歴史を重ねると、
なんだかしみじみと心に迫るものがあった。

夕食後の散策は、
もう一つの広島の姿を垣間見るものだった。

     ★

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