• 「猫の手貸します」

「今は希望がほしい」
被災地を訪問した際、
ある避難所の代表者から聞いた言葉だ。
この言葉には2つの意味があると受け止めた。
一つは。
家はおろか、地域が根こそぎ剥がされ、
破壊され壊滅的な街並みを目の前にし、
絶望的な気持ちになっている現実を表したもの。
もう一つ。
被災から約50日。
ようやく生きながらえることから、
「どう生活を立て直すか」、
ということに被災者の関心が移り始めたこと。
再出発の兆候が表れ始めたこととして捉えたい。
この避難所。
今回の5月4日から3日間の現地調査において、
一番最初に訪問した場所であった。
この行程の間、
その「絶望」と「再出発の兆候」が、
私の頭の中で常に交錯していた。
正直に言えば、
前者の方がやや上回っている。
どの場所に行っても、
被災地はまだまだ瓦礫の撤去が始まったばかり。
酷いところは道路の確保が精いっぱいで、
そのまま水が引いただけ、
「災害直後」が今も続いている、
という印象の場所も少なくなかった。
50日が経過しても、
まだこうした状況であったことは、
ある種、衝撃的だった。
そこに根付いて暮らす人々が、
時間をかけ、代々造り上げてきた街並み。
これが一瞬の災難で消滅するがごとく、
破壊されてしまったのだ。
「人間は自然にはかなわない…」
何度も思い知らされた。
自然を征服しよう、
コントロールしようなどという考えは、
持つべきではない、と考えた。
と、同時に「自然との調和」
という視点に立つことや、
歴史に学ぶことの必要性も改めて認識した。
被災地から帰宅し、一週間を経て、
この文章を記している今でも、
なかなか断定的に物事を考えられない。
この光景を思い出しながら、
この気持ちの整理をしている。
ただ。
訪問先の人々の明るい顔や、
雇用、住宅など生活再建を求める声を聞くにつけ、
確実に人々は再出発を始めている。
塩釜の市場では徐々に戻ってきている活気に、
気持ちを高ぶらせている
女将さん、オヤジさんの姿も見られた。
結局、人々の自らの意志によってしか、
再出発はあり得ないのだろう。
その兆候が見られたのは、
何よりの救いだった。
完全に消化し整理できたわけではないが、
この経験は、持ち場であるさいたま市政において、
最大限還元していきたい、と考えている。
いずれ発生が想定されている
直下型地震、都内直下型地震などの
さいたま市に関わる災害に備えるためにも。