昨日午後、品川区の日野学園の視察に参加した。
主催は自治体議会政策学会。
JR大崎駅で下車し、徒歩約10分のところにある日野学園。
ここは小中一貫校である。
■9年のスパンで
日野学園は今年の4月よりスタートした。
従来の小学校6年、中学校3年の義務教育の過程を、
品川区では「9年」として置き換えた。
独自の副教材の作成、
道徳などの教科を統合した市民科の創設、
仕事の中で能力を高める教員。
■日野学園校舎の建設
日野学園では、小学生・中学生が同じ校舎で学ぶ。
このような同一校舎は、あと5校予定されている。
今年できたばかりであたらしい。
施設建設に約70億円。ほとんど独自財源だ。
健全財政により拠出できたという。
それでも天井部分をむき出しにするなど、
費用の削減努力もしたという。
家庭科室などの特別教室は、
一般に貸し出す予定とのこと。
体育館や温水プールはすでに有料で貸し出している。
和室もあった。
■教育改革の流れ
小中一貫校ありき、で進められてきたわけではない。
品川区では、教育改革を進める中で、
たどり着いた一つの形がこの学校である。
品川区は教育改革を進めてきた。
背景には私立中学への進学率が、
20%を越えている点がある。
決して私立校と競うための改革ではないが、
公立校の規則基盤型からの転換を図り、成果を重視する。
特区制度を活用し、
「教員の意識改革」「学校教育の質的転換」
を目ざしている。
まず教育改革で最初に行なったのは、
「学校選択制」(H12:小学校/H13:中学校)である。
これにより保護者が学校に目を向け始める。
すると「外部評価制度」(H14)を必要とするようになる。
評価の中でも学力の情報のニーズに応えるため、
「学力定着度調査」(H15)を実施。
この流れとともに、
小学校教員と中学校教員との間で、
連関性が課題となってきた。
お互いに努力しているのに不満が高まる。
教員は分断されていた。
そこで義務教育を「9年」というスパンで考えるようになった。
この延長線上に「小中一貫教育」があった。
日野学園のように、施設一体型もあれば、
施設は小中で別となっているところもあるが、
全小中学校58校で同一のカリキュラムを進めている。
■独自の教育要領
小中一貫校の発想は品川区独自である。
文部科学省の「学習指導要領」では限界があるため、
品川区独自の「品川区小中一貫教育要領」を作成した。
これは一般に販売している。
品川区小中一貫教育要領
■「教員による改革」
最も印象に残ったのは、
教員は苦労しているが
品川の改革は、公教育の信頼回復のための
「教員による改革」であるという話である。
一般的に教育改革として進められるのは、
民間校長や塾の講師を公教育に導入する、
いわば民間人を登用する手法ばかりだ。
これに対し、「これでいいのか」との考えから、
教員が努力を続けているという。
危機感が大きな力となることを改めて実感した。
★
「こんにちは!」
視察時、すれ違う子どもたちが挨拶をする姿が印象的だった。
学校の周辺には高層マンションが立ち並ぶ。
新旧の住民が混在する地域だ。
品川区の取り組みは、
結果的に「地方分権」を進めることにもなっている。
特区制度を存分に活用するだけではない。
圧巻は「教育要領」を作成した点だ。
教育改革で先頭を走る品川区。
今後ますます注目していきたい。
【政調費】
交通費:浦和駅〜大崎駅…スイカで支払い